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​考えるチカラ

1.認知バイアス  

認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学の理論であり、ある対象を評価する際に、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められる。また、対象の目立ちやすい特徴に引きずられて、ほかの特徴についての評価が歪められる現象を指します。直感や先入観(思い込み)、恐怖心や願望が論理的な思考を妨げます。「個人」によるものと「集団」によるものがあります。

 

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■個人

1)正常性バイアス  

自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。事故やミスといった問題が予想される状況下であっても、それを正常な日常の延長上の出来事として捉えてしまい、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価してしまう。

例)大きな事故なんて今すぐ起こるはずがない。

2)現状維持バイアス  

大きな変化や未知なるモノを避け、現状を維持したくなる思考のこと。変化によって得られる可能性がある「得」よりも、それによって失う可能性がある「損失」に対して、過剰に反応してしまう傾向のこと。

例)年配中堅スタッフの腰が重く、業務改善や改革が進まない。

3)確証バイアス  

人は誰でも、無意識のうちに自分に都合のいい情報、自分の主張を後押しするような情報ばかりを集め、それにより自己の先入観を補強するという現象である。

例)A職員が頼りないと感じた瞬間に、A職員のミスや失敗の情報を集め、やはりA職員は頼りないという結論に至ってしまう。

4)授かり効果  

自分の所有している物への評価は、他人の評価より高くなる傾向がある。自分が所有している物の価値は最大7倍になるともいわれる。物だけでなく仕事や業務にも同じような傾向が起こる。

例)昔からやっている業務は誰にも預けたくない。

5)ハロー効果  

ある対象を評価する時に、目立ちやすい特徴に引きずられて、他の評価が歪められる現象のこと。良い印象から肯定的な方向にも、悪い印象から否定的な方向にも働く。

例)講演が上手い教授は、きっと臨床家としても優れているに違いない。

6)バンドワゴン効果  

多数がある選択肢を選択している現象が、その選択肢を選択する者をさらに増大させる現象。行列のできる飲食店を見るとそのお店は美味しいと思い込む傾向がある。

例)流行の最新治療法と聞くと最も優れた治療法と思い込んでしまう。

7)アンカリング  

アンカーと呼ばれる先に与える情報が判断を歪めアンカーに近づく現象のこと。人は過去の体験や経験に思考が引っ張られる傾向がある。

例)看護師と聞くと女性だと認識する。

 

■集団

8)同調行動  

他の人と同じことをしなくてはならないという心理によって行われる行動のこと。数名の人が建物の上を見上げていると通りかかった人も建物を見上げてしまう現象のこと。

例)自分は「B」だと思っているが、周りの人が「A」だと言うと「A」に合わせてしまう。

9)社会的手抜き  

 集団で共同作業を行う時に人数の増加に伴って、一人当たりの仕事量が低下する現象のこと。綱引きのような場面でよく起こる。

例)他の職員もいるのだから、自分一人くらい頑張らなくても大丈夫だろう。

10)リスキーシフト  

一人ひとりでは慎重であっても、何人かで話合うと、より大胆な方向へエスカレートして、より過激な結論になる現象。大きな声につられる現象。赤信号みんなで渡れば怖くない。

例)皆がマニュアルを守っていないのだから自分も守らなくていい。

 

11)集団浅慮  

会議などの集団での意思決定場面において、利害関係や専門家の存在などにより、本来の議題に対する考えが浅くなること。

例)ここで何か言うと嫌われてしまうかもしれないから意見を言わない。

12)集団圧力  

ある特定の集団において意思決定を行う際に、少数意見を有する者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせることを強制すること。空気の支配ともいう。

例)戦時中は「戦争に行きたくない」「敵には勝てない」と思っていながらその場の空気に拘束され、何も言えなくなってしまう。

 

2.0ベース思考  

私たちはバイアスの中で生活や仕事をしており、簡単にバイアスに掛かってしまいます。

ただし、バイアスは悪いものではありません。人類が培ってきた知恵でもあります。

大事なことはバイアスを理解し、コントロールすることです。

バイアスをコントロールするためには、まず常識を疑うこと、頭を真っ白にして0ベースで考えることが必要です。

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1)3つの合言葉 

そのための合言葉があります。

① それってなぜ?

② それってほんと?

③ それって何のため?

この3つの合言葉で徹底的に今の業務を見直してみてください。

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2)共通言語  

しかし、合言葉を使っても「今までこれでやってきたのだから余計なことは言わないで」と言われるような環境では意味がありません。仕事においてはすべての職員が対等であるべきです。3つの合言葉が使える安心感のある職場環境にするには「認知バイアス」「0ベース思考」「3つの合言葉」を共通言語にすることです。

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3.MECE(ミッシー)  

「MECE」とは、Mutually Exclusive collectively Exhaustive(モレなく、ダブリなくの意)の略で、お互いに重複がなく、全体として漏れがないことを指す。「ミーシー」ともいう。

 

1)分解する視点  

物事を分解することでわかりやすく理解することができます。思考が整理され、抜け漏れを防ぐ効果もあります。ノンテクニカルスキルを学ぶ上では欠かせない考え方です。

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4.フレームワーク思考  

「フレームワーク思考」とは、「枠組み」を用いて情報を整理し、意味合いを考えるというものです。ロジックツリーと呼ばれるものもフレームワークに含まれます。

 

1)型にする視点  

何らかの枠組みを設けて情報を整理すると、全体の俯瞰が容易になり、意思決定やコミュニケーションの効果が格段に上がります。分解する視点と合わせて使用します。

代表的な医療介護現場のノンテクツールを以下に示します。

① SBARモデル(伝達効率化の型):「状況 Situation」「背景 Background」「評価 Assessment」「提案 Recommendation」

② 2W1Hモデル(問題解決の型):「問題 What」「原因 Why」「対策 How」

③ 4Mモデル(原因特定の型):「人 Man」「設備 Machine」「環境Media」「管理Management」

④ SHELLモデル(原因特定の型):「ソフト Soft」「ハード Hard」「環境 Environment」「スタッフ Liveware」「患者 Liveware」

⑤ PDCAモデル(改善活動の型):「評価 Plan」「実施 Do」「評価 Chech」「修正 Act」

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5.問題解決技術  

問題解決には「型」があります。それが2W1Hと呼ばれる問題解決のフレームワークです。これは問題解決技術の型の中で最もシンプルであり使いやすいため問題解決最強武器と呼ばれています。問題を解決するには議論する順番があります。

1)問題を明確にする

2)原因を追究する

3)対策を実行する

この順番で議論しないとうまく解決まで導くことができません。しかし、実際は議論の順番を守らないことや、すぐに対策に走ってしまうことがよくあります。問題に対して不快な思いをする状態を認知的不協和と言いますが、人は認知的不協和を逃れるためすぐに解決策(下流)に走ってしまいます。しかし問題解決の大事なポイントは「議論の順番を守ること」「議論の枠を飛び越えさせないこと」です。

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6.問題(What)は何か?  

問題発見には「型」があります。現状とあるべき姿にはギャップがありますが、このギャップこそが問題ということになります。

ギャップを明確にするには現状を把握することです。

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1)現状を把握する  

現状を把握するには「背景を知ること」と「他と比較すること」が必要です。「背景」と「比較」をすることで問題が明確になってきます。

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2)事実を確認する  

問題が発生したと思ったら、まず行うことは「事実確認」です。そのために必要なのが「情報収集」になります。徹底的に情報を集め、事実を把握し問題を明確にすることから始めましょう。できれば現状を「数字で表現」してみてください。数字を使うことで問題が明確になり共有することができます。

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3)数字とグラフ  

グラフに用いる数字は3つです。

【実数値】:様々な量の連続的な変化を表す数の体系のこと。

【構成比】:全体を構成している個別の要素が全体に対して占めている割合や比率のこと。

【指数値】:変動する数値の大小関係を比率の形にして表したもの。

 

グラフのタイプは大きく分けて4つです。

【円グラフ】:丸い図形を扇形に分割し、何らかの構成比率を表したグラフのこと。

【棒グラフ】:棒の長さで数量を表すグラフのこと。量の大小の比較に利用される。

【折れ線グラフ】:時間の経過にともなうデータの推移を、折れ曲がった線で表すグラフのこと。

【相関グラフ】:二つの量を縦軸と横軸にとり、相関関係を表す図のこと。

数字とグラフの関係を右図に示します。

円グラフは主に構成比を表します。棒グラフは構成比を表すこともできますが、主に実数値を用います。折れ線グラフは実数値と指数値、相関グラフは実数値を用いて表します。

メッセージをよりわかりやすく表現するためにグラフを用いることが効果的です。どのグラフにすべきかについては、どの数字をどうみせたいかによって決まってきます。

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7.原因(Why)は何か?  

問題を明確にした次は、原因を追究していきます。原因追及の重要性を説明する際の例え話があります。

あなたは川のほとりに立っています。ふと川を見ると上流から段ボールに入った赤ちゃんが流れてきました。当然すぐに救い上げますが、今度は5人の赤ちゃんが流れてきました。仲間を呼んで赤ちゃんを救い上げましたが、今度はさらに100人の赤ちゃんが流れてきました。あなたはどうしますか?

ここでの根本的な原因は上流で赤ちゃんを流している人です。この人に赤ちゃんを流すことを止めさせないかぎり、赤ちゃんが流れてくるという問題の解決はできないということです。

 

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1)原因特定の「型」  

原因を効率的に追及するには「型」を使う方法があります。代表的な2つの型を紹介します。

① 4Ⅿモデル

【人(Man)】身体的状況、心理的精神的状況、技量、経験、知識等

【設備機器(Machine)】機器、強度、機能、品質等

【環境(Media)】スペース、配置、労働条件、勤務時間等

【管理(Management)】手順書、マニュアル、規定、組織体制、指導不足等

② SHELLモデル

【ソフト(Soft)】手順書、マニュアル、規定等

【ハード(Hard)】機器、器具、設備、施設構造等

【環境(Environment)】物理的環境、仕事や行動に影響を与えるすべての環境等

【スタッフ(Liveware)】スタッフ、当事者

【患者(Liveware)】利用者、当事者以外

これらの「型」を使って効率的に抜け漏れなく原因を追究していきましょう。

 

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2)原因追及の3つの罠  

原因を追究していくときに陥る3つの罠があります。「根本的な原因」が以下のようになってしまうと建設的な議論ができず、解決の打つ手が無くなってしまいます。

① 政治や行政、病院や施設のせいになる。

② 転倒の原因が職員の給料が安いといった問題とかけ離れたところに行きつく。

③ 原因を人に帰着し責任追及になってしまう。

 

8.対策(How)は何か?  

原因を追究した次は対策を立案し実行していきますが、重要なポイントが3つあります。

1)重要思考

2)優先度を決める

3)3Wの実行プラン

1)重要思考  

問題や課題を解決しようとするとき、しばしば対立構造が生まれてしまいます。それは、お互いに大事にしているコトが違うからです。問題や課題が起こった場合には自分の大事なコトを主張するのではなくお互いの大事にしているコトを共有し、最も大事なコトから議論していきましょう。

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2)優先度を決める  

問題解決を効果的に進めていくには、対策案の優先順位を決めることです。どの対策を優先するかを迷ったら、評価軸を使って決めましょう。一般的には「実現可能性」「効果」「コスト」等を○△×といったように点数化し優先順位を決めて優先度の高いものから進めていきます。

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3)3Wの実行プラン  

対策案が決まったら、実行プランを決めましょう。これを決めないと問題解決が進まないことになります。

 

【3Wの実行プラン】

What:何を?

When:いつまでに?

Who:誰が?

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最後に「ピーター・F・ドラッガー」はこんな言葉を残しています。

「重要なことは『正しい答え』を見つけることではない。『正しい問い』を見つけることである。『間違った問い』に対しての『正しい答え』ほど役に立たないものはない」

問題解決で最も重要なのは問題を明確にすることなのです。

 

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