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​決めるチカラ

1.ファシリテーション技術  

ファシリテーションとは、会議やカンファレンス等の集団活動が効果的効率的に進むように支援することです。会議の97%には無駄があるといわれていますが、実際に参加している会議の場面を思い浮かべてください。たくさんの無駄があることに気づくでしょう。医療介護業界は会議が多いことでも知られています。皆さんが実際に参加している会議ではどんな問題が起こっていますか?

・時間が長引く

・話が脱線する

・何も決まらない

・結論が出ない

・意見が出ない  などなど…

もしかしたら上記のような問題が起こっているかもしれません。

ファシリテーションの目的は「決める」ことです。ただ「決める」だけでなく、質の高い議論をして参加者全員の合意をとって「決める」ということです。

ファシリテーション技術には2つあります。会議前に効果的な「仕込みの技術」と会議中に実践する「さばきの技術」です。2つの技術について説明していきます。

97%は無駄である。.jpg
技術ファシリテーション.jpg

 

2.仕込みの技術  

会議の80%は仕込みの段階で決まります。つまり会議の事前準備が大切ということです。

仕込みの技術には「Goal」「Process」「Start」の3つのポイントがあります。頭文字をとって「GPS」と覚えてください。

ファシリテーターはツアーガイドと同じです。旅行に行くときは目的地(Goal)、出発地点(Start)、道筋(Process)を決めますが会議でも同様です。それぞれのポイントについて説明します。

GPS.jpg

 

1)Startのポイント  

Startのポイントは「問題を明確にする」ということです。問題を明確にするには、まずは現状を把握し、事実を確認することが必要です。

現状を把握するには「背景を明確にすること」と「他と比較すること」です。背景が明確になればなるほど問題がハッキリ見えてくるし、他と比較すればするほど現状の問題が明確になります。

 

そのためにも情報を収集し「事実確認」をしていきましょう。できれば現状を数字で表現してみてください。

会議を始めるときに大事なことは参加者のスタートラインを合わせることです。つまり、参加者全員で問題を確認し共有してから始めるということです。

問題を明確にする.jpg

 

2)Goalのポイント  

Goalのポイントは「到着地点を決める」ということです。つまり、会議の目的や目標を事前に決めておくことです。

ゴールを具体化するために3W1Hを明確にします。3W1Hは以下の4つです。

Who(誰が?)

What(何について?)

When(いつまでに?)

How(どのように?)

例えば、「待ち時間が長いという患者様からのクレーム」についての改善策を話し合う場合には以下のようなゴールになるかもしれません。

Who(誰が?):会議に参加するメンバー全員が

What(何について?):患者様の待ち時間が長いというクレームについて

When(いつまでに?):この会議の時間内で

How(どのように?):現状を把握し、患者様が理解納得してくれる方法を立案する。

 

また、効率的に会議を進める上で効果的なのが「事前資料を配布」しておくことです。事前資料を配布することで一から説明することを省くことができます。

 

3)Processのポイント  

Processのポイントは「道筋を決める」ことです。つまり事前に順番を決めることでスムーズに会議を進めることができます。

会議で決めるべき順番には2つあります。それが「議論の順番」と「発言の順番」です。それぞれ説明します。

ゴールのポイント.jpg
道筋のポイント.jpg

 

①  議論の順番

会議で話し合うべき案件は一つではありません。例えば案件ABCと3つあったとします。その中でも最も優先順位が高い案件から話し合うようにした方が効果的です。また、効率的に行うために簡単に合意の取れる案件から始める場合もあるでしょう。状況や案件に応じて事前に順番を決めておくことが必要です。

案件の優先順位.jpg

 

①  発言の順番

会議によっては発言する順番を決めておくことも効果的です。いきなり意見を求められても答えられない場合もあります。案件に応じて事前に参加者を仕込んでおくといいでしょう。「会議ではあなたに発言を求めますからよろしくお願いします」と事前に伝えておくことで参加者も心の準備ができるため意見が出しやすくなり、議論が円滑に行えるようになります。

参加者の仕込み.jpg

仕込みの技術はGoal、Start、Process(GPS)を決めることです。スタート、ゴール、プロセスを決めると参加者が一斉にスタートを切ることができます。ゴールを決めないと目的と別方向に進んでしまうことがあります。スタートが決まってなかったらまたスタートに戻らないといけません。道筋が決まっていなかったらジグザグに進んでいくことになります。Goal、Start、Process(GPS)を決めることで効果的効率的に参加者を目的地まで導くことができるのです。

 

3.さばきの技術  

会議中に必要な「さばきの技術」のポイントを説明します。 ファシリテーションには3つの流れがあります。それが「あるべき論点を押さえる」「参加者の発言を促す」「ズレた論点をすり合わせる」という3つのポイントです。

それぞれについて説明します。

さばきの3つのポイント.jpg

 

1)論点を押さえる  

議論をする場合には、まずあるべき論点を押さえることが必要です。論点とは、議論の中心となる問題や課題を指します。「私はこう思います」という主張には必ず「〇〇について」という論点が存在します。主張が答えとしたら論点は問いの関係になります。

 「論点」を制する者は議論を制するといわれるほど「論点」を掴むことは重要になります。

論点とは.jpg

ここで、例題を出して確認していきましょう。

例1)

主張:「私はコーヒーが好きです」

論点:「好きな飲み物は何か?について

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例2)

主張:「入力ミスをしないようにダブルチェックが必要です」

論点:「入力ミスの対策案はなにか?について」

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相手の主張から論点を導き出すことを論点思考といいます。会議や会話の中でたくさんの主張が飛び出し、論点がわからなくなることがあります。最初にやるべきことは相手の主張の論点を押さえることです。論点を把握するには相手が「何を」言っているのかではなく「何について」言っているのかを考えることが必要です。

論点を押さえる.jpg

 

論点が複数存在すると何について議論していいのかわからなくなり迷子になってしまいます。コミュニケーションはキャッチボールです。キャッチボールはボール一個でないと受け取ることができません。議論も一緒です。議論するときの鉄則は論点を一つに絞ることです。合言葉の「まずは、」で論点を一つに絞ってから議論していきましょう。

まずは!.jpg

 

2)論点をすり合わせる  

 論点をすり合わせる時に必要な共通言語が「論点ズレ」です。互いの主張の論点がズレていることを指します。

例えば極端な例で言うと、好きなプロ野球チームについて意見を求めているときに、「私はコーヒーが好きです」と主張するのが「論点ズレ」です。

論点ズレ.jpg

論点ズレは問題や課題を解決していく場合によく起こります。問題の原因について議論しているときに対策の話が始まることがあります。例えば、感染防止委員会の会議で感染拡大の原因について議論しているときに、「職員の手洗いを徹底する必要があります」という主張は、感染拡大防止の対策案になるので、論点がズレているということになります。

感染拡大論点ズレ.jpg

 

3)論点思考で議論を進める  

議論を効果的に進めていくために、まずはあるべき論点をハッキリさせます。次に今の論点をハッキリさせて、論点がズレていたらあるべき論点に戻します。この繰り返しで議論を進めていきましょう。あるべき論点に戻そうとしても、発言者に気を使ってなかなか修正できないことがあると思います。無理に戻そうとすると人間関係が壊れてしまう恐れもあり、言い出せないこともあるでしょう。論点ズレを修正するためには、まず、論点ズレを共通言語にする必要があります。論点ズレが共通言語になれば発言者も自分の主張の論点がズレていることに気づくことができます。まずは、職場に共通言語を作っていくことからはじめましょう。

論点思考サイクル.jpg

 

4)議論の5つの方向  

議論には5つの方向があります。議論を「進める」のか「戻す」のか、議論を「広げる」のか「深める」のか、はたまた「止める」のか。その方向を決めるのがファシリテーターの役目です。

まずは、議論を「広げる」と「深める」ための質問技術について説明していきます。

議論の5つの方向.jpg

 

5)質問技術  

質問には2つの種類があります。

例えば、AとBの質問を比べてみてください。

A:どんなお酒が好きですか?

B:ビールとワインどっちが好きですか?

Aは答えが複数ですが、Bは答えが限定となります。Aをオープンクエスチョン、Bをクローズドクエスチョンといいます。

では、それぞれどんな場面で活用するのでしょうか?

質問.jpg

 

6)オープンクエスチョン  

オープンクエスチョンの効用は論点を広げてヌケモレを防ぐことです。例えば、好きなお酒の話をしているときに、ワインの種類の話、ワインの歴史の話になってしまうと議論が偏ってしまい意見が出しにくくなってしまします。そんなときには、「ワインに限らず好きなお酒について意見をお願いします」といったオープンクエスチョンが有効になります。

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7)クローズドクエスチョン  

クローズドクエスチョンの効用は論点を絞り徹底的に意思決定することです。

ファシリテーションの目的は質の高い議論をして参加者全員の合意をとって「決める」ということですが、「決める」ためには参加者に自ら発言させて「決める」ことが重要となります。人は自分で発言したことには責任を持って行動に移せるからです。

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8)結論の確認と共有  

議論の最後にやるべきことがあります。それが結論の確認と共有です。最後にこれをすることで後から「そんなこと会議で言ってましたっけ?」「会議で決まってました?」と言われることがなくなります。

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